ひうでえの独り言

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【路線継承か、刷新か 16年ぶりの正副自治会長選挙】

12日、東大教養学部学生自治会のトップを決める138期正副自治会長選挙の運動期間がスタートした。選挙期間は11月21日まで、投票期間は11月27日から12月5日に予定されている。

 


今回の正副自治会長選挙では、2002年以来16年ぶりに正自治会長、副自治会長双方に2人以上の候補者が立候補している。通常は立候補者が1人のみのこの選挙では大変珍しい現象である。正自治会長については今年6月の137期自治会長選挙で16年ぶりに2人以上の立候補者が現れたが、正副共はこれが学生自治会が2011年に全国学自治会総連合(全学連)を脱退して以降初となる。

 

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写真:生協食堂横に今春設置された机 生協食堂の混雑は深刻である

 

立候補者の概要


 正自治会長の立候補者は届出順に共に新人の1年理科1類のY氏、1年理科2類のM氏である。Y氏は6月の137期正自治会長選挙に立候補し、現職のF氏に対して50票差に迫った。一方のM氏はF氏との連合を組んで立候補した137期副自治会長選挙で当選し、半年間副自治会長を務める。
 M氏は7月からの半年間、副自治会長として学生自治会を取りまとめつつ、広報活動の拡大や立て看板をめぐる問題の対処に務めた。Y氏は理事(学生自治会の機関の1つ、理事会の議員)として、他学生自治会との連携の提案、生協食堂の混雑状況解消のための取り組みを行った。 

争点1 継承か新路線か


 今回の選挙は2期1年務めた現職のF氏引退により、新人同士の争いになっている。

 F氏はこれまで「学生に近い学生自治会」を掲げ、LINE@の導入をはじめとした広報活動の強化や自治委員会、執行部の改革を行ってきた。また、食堂混雑解消、Wi-Fi問題など学部との協議を行ってきた。

 

M氏は「中立な自治会運営」を掲げ、基本的にはF氏の路線を継承した公約を出している。学生の声に基づいた学生自治会運営、情報公開・広報の徹底により学生自治会の活動を会員に周知させること、学部交渉を通じた学生の民意実現を訴える。
一方、Y氏は学生自治会の構造を一変させようと提案する。M氏は学生自治会が現状行なっている教養学部との学部交渉だけでは不十分であり、大学本部との折衝、総長交渉を通じた教養学部への予算分配の増額、全国の学生自治会をまとめる「国学自治会懇談会(学自懇)」の設置、学自懇の活動による学生自治に好意的な世論の形成、文部科学省との交渉を行うと言う。

 

 

争点2 他大学学生自治会との関わり


 Y氏とM氏では特に他大学学生自治会との関わりについて特に意見が分かれている。M氏は「学外党派の介入を許さない」姿勢であり、公安調査庁の監視対象となっている左翼過激派に支配されている他学生自治会とは距離を置くとしている。

 他大学の学生自治会との関わりに関して会員からの公開質問状に以下の通り回答している。

弊選対は、他大学の自治団体と積極的に関係を構築する考えはありません。

ご指摘にあるように、他大学の自治団体の中には、学外党派の介入を受けているものもあると言われています。また、その大学の校風・文化がなすところも異なるでしょうから、一口に自治会と言いましても、実態は様々だと推察されます。

駒場の学生の自治は未だ完全とは言えません。この状態で他の自治会との関係を模索しても、無用の混乱を生み、学生の方を不安にさせてしまう可能性が高いでしょう。

 

  一方Y氏は駒場キャンパスで起こっている問題はほぼ全てが文部科学省による東大への予算削減や「学生自治の破壊」によるものであると議論を展開し、学自懇を通じて他学生自治会と協力して文部科学省の進める「大学自治の破壊」に対抗する予定である。Y氏は会員から他大学学生自治会との関わりについて聞かれた公開質問状に対して以下のように回答している。

公約に掲げている通り、私が自治会長となった暁には、他大学の自治組織に学生自治懇談会への結集を呼びかけます。私個人の意見としては、自治への取り組みを行っている、或いは行おうとしている団体や個人について、政治思想に拠る差別はせず、ノンポリノンセクト日本共産党系、新左翼系でも、或いは、あまり馴染みはありませんが、右派系学生自治会でも対話や議論の対象と考えています。

 

 学生自治懇談会の活動は、成果の見えにくい活動に対してコストやリスクが高く、批判が予想される。しかし、Y氏はその指摘に対して「これら交渉や宣伝によって学生の利益を勝ち取る活動は、学生自治会の本旨であり、引き続き自治会に深く関わっていくつもりの身としては、これを軽視する訳にはゆきません。現在も自治会が学部交渉に於いて大小様々な問題を解決していることに鑑みれば、新たな挑戦も成功するものと思われます。」と楽観的だ。

 

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国学自治会総連合(全学連)中央委員会の様子

東大教養学部学生自治会全学連から2012年に脱退し、現在はどこの党派からも支配、介入を受けていない

 

 

争点3 総長交渉、この道しかない?

Y氏は連日生協食堂前などで演説を行っており、「総長交渉、この道しかない」「総長交渉で教養学部への予算割り振りを多くしよう」と訴えている。「総長交渉」とは東大総長と学生自治会との交渉を意味し、以前は行われていた。Y氏は総長交渉について「学部交渉同様、要望調査を実施し多く集まった不満について(そのうち大学本部に訴える必要ありと理事会が判断したものを)要求するほか、学部交渉の学部側回答に於いて『教養学部単独での満額回答は不可』とされた項目について規則改正や予算計上の要求をしていくものと考えています。」と述べているが、そもそも以前行われていた「総長交渉」は東大の各学部の学生自治会の集まりである中央委員会が交渉主体であり、教養学部学生自治会が主体ではない。そのため、Y氏が自治会長に当選したとしても前途は多難だ。

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写真:Y氏が設置した立て看板 「総長交渉、この道しかない」との記載がある

 

争点4 表現の自由と安全、景観

学生自治会はビラ、立て看板、学生用掲示板の管理を行なっているが、使用された立て看板は数カ月にわたり放置されたり、ビラも本来は撒いた団体が回収するはずなのに放置したままといったように、モラルの低い学生も多い。また、ビラは邪魔だ、立て看板は危ないなどの学生用広報物については否定的な意見も少なからず見られる。

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写真:ビラが撒かれたまま放置されている教室

 

この現状に対して、2人の候補者は会員から寄せられた公開質問状に対して以下のように答えている。

M氏陣営

私が考える学生広報のあり方に関する質問ということですが、基本的には学生が自由に広報する権利は侵害されることはあってはいけないと考えています。

先日皆様に回答して頂いた立て看板に関する質問でも、広報物として役に立っているという回答が多く寄せられました。

このように、広報媒体が制限されてしまうと活動に支障をきたすサークル・団体が存在するため、その制度を廃止することは簡単には出来ませんが、仰る通りそういった広報物に対しての不満の声も多く耳に致します。

そのため、可能な限り学生の迷惑にならないように広報物に関する規則を現在制定しており、次期自治委員会に提出する予定です。

 

 Y氏陣営

ご指摘の通り、広報物について否定的な意見を持つ学生がいることは事実です。しかしながら、広報物の果たしてきた歴史的役割についてはあまり知られていないようです。特に、私達が重要視している「駒場寮廃寮」攻防に於いて、立て看板やビラは当時の大学当局が強行した悪事の数々を、被抑圧側である学生から世の中へ告発する手段として、大いに役立ちました。また現在に於いても、これら広報物を利用した告発が行われている大学は数多くあります。このように通時的共時的考察を深めていくと、学生が広報物の権利を手放すということを時の執行部が勝手に決めてしまうことは極めて危険です。またそもそも、立て看権、ビラ撒き権というものは、学生自治会以前から学生に備わっている権利であり、学生自治会はこれを賦与するのではなく保障しているに過ぎません。故に学生自治会は本来広報物を規制或いは禁止する主体たり得ません。

当選後の取り組みとしては、現在私が総務局長として推進している、本会保有文書を読み解く文書管理課の事業を軌道にのせ、広報物の歴史についての理解を広めていくことを考えています。

 

基本的には両者のスタンスは同じであるが、その趣旨・目的などでズレが見られる。

 

投票について

今回の自治会長選挙は現在の1、2年生であれば誰でも投票できる。前回は1年生60%台、2年生は1%程度であった投票率がどう変動するかも重要である。

投票期間まで1週間強、どのような結果になったとしても学生自治会の今後を大きく決める選挙となることは確かであり、前期課程生の選択が注目される。